いま六巻目を読んでいるところです。
基本的には読みやすく面白い部類のラノベだと思いますし、なにより日向悠二氏のすらすと好きにはたまらなくポイントが高いです。テレビ版エピソードの最終二話が五巻に当たるらしいのですが、テレビの最終話のやりっ放し感とは展開も違い、それなりに納得がいくように落としているところなどは好感が持てました。

……が、いかんせん作者の認識の甘さが多分に出ている作品でもあるようにも思えます。
文章が多少拙い部分があるのは目を瞑るとして、第五巻までで特に頂けなかった点は

1.盲導犬はペットではないこと。
2.昭和二年においての社会描写のリサーチの甘さ

集約されると思います。
1.に関しては読んで字の如くなので敢えてここでは例を挙げてもうしませんが、本書をして介助犬一連に対する誤解を植え付けかねないので早急に認識を改めるべきであると思います。また、読者もそれを認識した上で読みましょう。

2.に関しては、むしろ広瀬正作品に詳しく、昭和初期の社会背景を深く感じ取るならまず『マイナス・ゼロ』あたりを読了後に本書4巻を読むことを強くお奨めします。
昭和2年当時はまだまだ牧歌的であり、居留邦人保護のための1927年の山東出兵などがあったにせよ、それは湾岸戦争よりも規模も認識も大きくなく、当時国際的に執り行われていた単なる武力介入に満たない合法的行動の一つに過ぎなかったと思われそれ以前に行われたシベリア出兵よりも扱いは小さいものでした。従って、登場人物の雅臣が言うように「戦争はいつ終わるのか」等という深刻な事態ではなかったものます。
実際深刻化してくるのは'31年の柳条湖事件、翌32年の第一次上海事件の後であり、それですら戦争状態というにはもう少し余裕のある極度の緊張状態の中の武力介入に過ぎませんでしたから、明らかに本書4巻におけるキャラクターの言動は誤りです。
そんなわけですから、当時は日本本土を爆撃されるという概念もなく「ガーゴイル」で航空機を迎撃することを想定できたのなら立派な予知能力者だったのではないかと思われます。
もっとも、第4巻においては高浜イヨの「夢の中」がぶたいであり、彼女の装置への入力ミスであると考えれば合点はいくのですが作者的にはどうなのでしょうか?

とりあえず8巻まで借りてるので後三冊。